新年にあたって(2015年1月)

公益社団法人 日本栄養・食糧学会 会長(平成26・27年度):近藤和雄

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:近藤和雄

あけましておめでとうございます。新しい年の年初めに際し、会員の皆様に御挨拶を申し上げます。  

日本栄養・食糧学会の平成26年度、27年度の会長職をおあずかりすることとなりました。本学会の会長職は、初代の大森憲太会長にはじまり、第29代の宮澤陽夫前会長に至るまで、これまでの栄養・食糧学界を背負ってこられた重鎮の先生方ばかりがつとめてこられました。大先達の先生方が脈々と受け継がれて、本学会の歴史と伝統を築きあげてきたことを思うと、会長職の重責に改めて身の引き締まる思いがします。  

本学会は、今年で68年目を迎えますが、敗戦後の日本の栄養不足を専門的に対処することを目的に、日本の栄養学と食糧学に関するトップクラスの専門家が集まり、昭和22年(1947年)に設立された学会です。同時に第14分科会として日本医学会に属し、医学と緊密な連携を保っています。近年の医学の進歩は著しいものがありますが、医学研究の進歩のもとには、栄養学・食糧学の研究者たちの数多くの研究成果がなければありえなかった事は、まぎれもない事実で、本学会が日本医学会に属しているゆえんでもあります。  

日本医学会との良好な関係を保ちつつ、新しい学問領域を開拓、発展させて、先進諸国の中で最も動脈硬化性疾患の少ない長寿国日本を生み出した事に、学術面から本学会は大事な貢献をしてきたと言えると思います。  

本学会の今年の最大事業は言うまでもなく、5月14日(木)から18日(月)にかけて、パシフィコ横浜で開催される、宮澤陽夫組織委員長と加藤久典事務局長を先頭とする第12回アジア栄養学会議(ACN)と、東京農業大学の鈴木和春教授を会頭とした第69回日本栄養・食糧学会大会との合同大会に他なりません。

前回アジア栄養学会議を行ったのは、バブル経済真盛りの1987年の第5回大会で、井上五郎会長、田中武彦事務局長のもと、大阪で開催されました。今回は28年ぶり、2回目の日本での開催となります。日本栄養・食糧学会大会は、第65回の東京大会から、仙台、名古屋、札幌と経由して4年ぶりの関東支部の担当で、今回は国際学会、しかも、演題数1600演題、4000人の参加を目標に準備を進めています。  

本学会の存在理念は設立時、専門家による栄養不足の解消でしたが、現在の栄養過剰へと時代の変遷に伴い、理念自体も変化し、多様化してきました。時代の流れは国内だけにとどまらず、アジアから世界へとグローバルに展開する事が求められています。

8年前、本間清一会長、宮澤陽夫副会長、石田均副会長時代に打ち出された、将来を見据えた栄養学・食糧学のグローバル展開が実を結び、2015年には第12回アジア栄養学会議(ACN)がパシフィコ横浜で、第69回日本栄養・食糧学会大会と合同で開催されるのに続いて、2021年には、国際栄養学会議(ICN)が東京国際フォーラムで開催される事が、昨年スペインのグラナダで行われた国際栄養学会議の総会で圧倒的多数で決定されました。

すでに本学会の使命は日本を飛び越え、世界の栄養学・食糧学をリードする立場に立たされている事を肝に銘ずる必要があります。このためには、日本学術会議のIUNS分科会や関連する学会、協会、そして産業界との強い連携が極めて必要ですし、なによりもオール・ジャパンで取り組む事が大事になります。  

こうした本会のグローバル展開のために学会活動の充実は言うまでもありません。研究者にとって魅力のある学会活動の場を提供することが、会員増の基本になります。具体的な話になりますが、現在、本学会には表彰制度として年齢順に功労賞、学会賞、奨励賞があります。しかし、最も若い会員を対象にした奨励賞でも、受賞者は30歳代後半の中堅若手研究者です。

そこで20代の若手研究者を対象にして、若手奨励賞を設け、最も学会員の多い20代層をさらに厚くして将来に備えることも考える必要があるかもしれません。もちろん本学会で活発に行われている産学連携研究は非常に重要で、前宮澤会長肝入りで新設された栄養学・食糧学に関する新しい技術開発を表彰する『技術賞』とともに、産業界との絆を更に強固なものにしていきたいと願っています。  

このほかにも、本学会の機関紙である日本栄養・食糧学会誌の審査期間の短縮など更なる充実をはかり、投稿数を増加させること、日本ビタミン学会と共同編集しているJournal of Nutritional Science and VitaminologyのImpact Factorの増加と予算の安定化、日本栄養・食糧学用語辞典(改訂版)の出版を今年度中に実施するなど、公益性の拡大、医師会員増加をはかるなど日本医学会との連携、国内の栄養関連学会との連携の模索、国外関連学会とのMOU(Memorandum of Understanding)締結による連携推進、さらに一層の学会ホームページの充実をはかること、会計面における理事会責任体制の強化、非医学系会員の多い本学会における利益相反に関する対応検討など多くの課題があり、業務執行理事を中心に担当の委員会委員の先生方と連携して、理事会でこれらの諸課題に対応していく所存です。  

本学会は公益法人となって4年を経過しようとしています。事務局体制も井越道晴前事務局長、高野靖現事務局長はじめ事務局を担当して下さる方々のお陰ですっかり整備されました。この体制がいつまでも保持されますことを心より望んでおります。  

本学会が会員の皆様とともに、日本の栄養・食糧学を代表して、リードする学会で有り続けるために、魅力に富んだ事業展開を行う所存です。御支援と御協力を本年もどうかよろしくお願い申し上げます。