会員のみなさまへ

公益社団法人 日本栄養・食糧学会 会長(平成28・29年度):下村吉治

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:下村吉治

この度、日本栄養・食糧学会第70回大会の社員総会(平成28年5月)において会長に選出され就任しましたので、一言ご挨拶を申し上げます。私の会長としての任期は、2年後の第72回大会の社員総会までとなりますが、この2年間に本学会が公益社団法人としての地位を堅持し学術団体として一層発展するように、微力ではありますが私の最善を尽くすことを所信としたいと存じます。

学会運営における重要な決定機関は理事会であります。宇都宮一典副会長はじめ、この理事会を構成する私以外の理事、監事、庶務幹事の先生方、高野靖事務局長を筆頭とする事務局の職員の方々のご協力を得まして、理事会において学会活動を支え、また舵取りをして参りたいと存じます。また、各種委員会の多くの先生方にも学会を支える重要な活動をして頂いていますので、ここで改めて皆様のご健闘をお願いしたいと存じます。

ここで申し上げるまでもなく、栄養・食糧科学はヒトの健康にとってインパクトの高い分野です。医学との関連が深いこともあり、本学会は日本医学会の第14分科会として加盟しています。本学会の重要な研究トピックスとして、過栄養・肥満、生活習慣病、老化関連疾患を挙げることができますが、年次大会ではそれらに関連した多くの基礎研究等が報告されています。この背景には、“エビデンスに基づいた栄養”の概念が本学会に定着しているためと考えられます。現在の日本の医療費を軽減するためにも、本学会の使命は重大であると確信しています。

さて、ここで本学会の現在の概況をご報告いたします。本学会が中心となり、昨年(2015年)5月に第12回アジア栄養学会議(12th ACN)がパシフィコ横浜を会場として盛大に開催されたことはまだ記憶に新しいと思います。この国際学会の日本への招致は、2009年タイ・バンコクでの国際栄養学会議(19th IUNS-ICN)中に開催されたアジア栄養学会連合(FANS)理事会において決定されました。

さらに、2013年スペイン・グラナダでの国際栄養学会議(20th IUNS-ICN)中に開催された国際栄養科学連合(IUNS)総会において、2021年国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN)の開催地が東京に決定され、同時に本学会の宮澤陽夫先生(平成24・25年度会長)がIUNSの理事に選出されました。この22nd IUNS-ICNの東京誘致には本学会の誘致準備WGメンバーが活躍しました。

来年(2017年)10月には、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて21st IUNS-ICNが開催されますので、そこで次の東京大会への受け継ぎが行われる予定です。このように、本学会はグローバル化の真っただ中にいます。理事会としましては、現在のこの国際化の波にきちんと対応できるように本学会の体制を整えていきたいと思います。

本学会における懸案事項の一つとして、「利益相反(conflict of interest、COI)」があります。COIとは、産学連携活動に伴い発生する個人の利益と公正な教育・研究における責任が衝突・相反することを指します。3年前の第67回大会(2013年)において試行的にCOI開示を実施する予定でしたが、直前に時期尚早と判断され中止さました。その後、前会長の近藤和雄先生の指示により栄養・食糧科学を研究する学会に相応しいCOIにつての検討が続けられ、現在ほぼ成案が得られています。したがいまして、本学会でも間もなくCOI開示を実施することになると思われます。COI開示は、利益相反問題から研究者を守るための措置とお考え頂き、会員各位にはその実施にご協力をお願い申し上げます。

現在の本学会の正会員数は徐々に減少傾向にあります。この傾向は何とか回避したいと考えていますが、同様な傾向は他の栄養関係の学会でも認められるようです。そこで、今後は栄養関係の学会が協力し合うことが必要となる場面が多くなると思われます。直近の例としては、大規模な国際学会の開催や科研費審査システムの改革などが挙げられます。ここで発生する問題は、学会活動および各研究者の研究活動に大きな影響がありますので、複数の学会による対処が効果的と考えられます。それらに関する情報が得られました場合には、学会ホームページ等を通じて早急に会員のみなさまにお伝えしながら対処して参りたいと存じます。

本学会の状態は、2011年(平成23年)に公益社団法人に移行認定されたころから安定して参りました。これも会員の皆様の学会へのご貢献があったればこそと感謝申し上げます。上述しましたように、本学会は会員数の減少傾向にあるものの発展を続けております。今後も、本学会は公益法人として定款を遵守し、種々の問題を克服しながら学術の発展と社会への貢献を続けて参ります。特に、国内のみならず国際的発展が進むと考えられます。今後とも、皆様のご支援とご協力を切にお願い申し上げます。

過去の会長のあいさつ