新年にあたって(2016年1月)

公益社団法人 日本栄養・食糧学会 会長(平成26・27年度):近藤和雄

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:近藤和雄

あけましておめでとうございます。お陰様をもちまして、日本栄養・食糧学会会長として何事もなく無事に二度目の正月を迎える事が出来ました。厚く御礼申し上げます。

まず、昨年、本学会の最大事業として位置づけた第12回アジア栄養学会議(宮澤陽夫組織委員長、加藤久典事務局長)と第69回日本栄養・食糧学会大会(鈴木和春会頭)の合同大会が、2015年5月14日から18日までの5日間、パシフィコ横浜で開催されました。

51カ国1地域から3,769名(海外から1,149名)の参加があり、アジアを中心とする世界の最先端の研究者達と、1,441演題の一般講演を中心に、基調講演、教育講演、シンポジウムを通して、5日間の会期中、活発な討論や、情報交換が行われ、栄養学、食糧学の今後の発展に有意義な大会であった事、産業界の御支援のお陰で財政的にも問題なく閉会した事を御報告します。

この国際大会は、9年前の本間清一会長時代に打ち出された将来を見据えた栄養学・食糧学のグローバル展開の一環として行われたもので、この路線は、2021年の東京で行われる第22回国際栄養学会議(22nd ICN)まで敷かれているとの認識を持っていただく事のお願いを全会員の皆様にしなければなりません。5年後の22nd ICN開催時には、次世代の現在50歳代中途の先生方が中心になると思いますが、次々世代の先生方には、ICN東京大会への御助力をお願いするとともに、このグローバル路線を途切れさせないために、(ほとんど国際交流が途切れてしまった感のある1990年代と同じ轍を踏まないために、)次の一手を考えて頂きたいと思います。

第70回日本栄養・食糧学会大会は、本年5月13日から15日の3日間、中野長久会頭のもと、神戸ポートピアホテル、武庫川女子大学で行われます。研究者にとって魅力のある学会活動の場となる事を期待しています。次々回は、本学会創立70周年の第71回記念大会で、山田耕路準備責任者のもと、沖縄で行われます。大都市を離れた初めての記念大会となりますが、沖縄ならではの記念大会として学会の発展につながる大会になる事を期待しています。

こうした学会の発展のためには魅力ある学会活動の充実が極めて必要です。これまでも学術大会では、シンポジウム、ワークショップ、一般講演をはじめとして、様々な発表の場を提供し、支部大会にも学会活動強化費を提供するなど、学会活動の充実を図ってきました。学会活動に対する表彰制度も充実しており、功労賞、学会賞、奨励賞の三賞があり、これまで受賞者の多くが、学会活動の中枢として、本学会を支えています。

また新たに、20歳代の若手研究者を対象にして、若手研究助成を設置する事が学会活動強化委員会(池田郁男委員長)の答申を受けて、第3回の理事会で決定されました。これまでの奨励賞の受賞者が30歳代後半の中堅若手研究者に集中していた事を受けたもので、この制度により、20歳代の若い研究者の大学院、ポスドクの研究にも光が当てられる事になり、最も会員数の多い20歳代の層をさらに厚くして、将来の栄養学、食糧学の発展につながることを祈念しています。

産学連携研究をさらに強固にするため、宮澤陽夫前会長の発案により創設された栄養学、食糧学に関する新しい技術開発を表彰する「技術賞」は本年第2回目を迎え、着実に産業界に浸透しつつあるのを感じます。栄養学、食糧学の発展のためにも、産業界との絆をさらに強固にしていきたいと願っています。

本学会のもう一つの研究発表の場である機関誌、日本栄養・食糧学会誌は依然として審査期間を更に短縮すること、採択率を高めることなどの課題を抱えてはいるものの、順調に発刊を続けています。日本ビタミン学会との共同編集のJournal of Nutritional Science and Vitaminologyはインパクトファクターの増加、予算の安定化の問題が内包されていますが、予算の安定化は喫緊の課題かもしれません。

日本栄養・食糧学用語辞典の改定版は、お陰様をもちまして、昨年、無事発刊する事が出来ました。用語辞典の発刊は本学会の重要事業の一つと位置付け、用語委員会も常置委員会の一つに格上げして、辞典の充実が継続的に図れるように理事会で決議されました。

本学会の存在理念は、設立時、専門家による栄養不足の解消でしたが、時の流れとともに変化し、多様化している事は否めません。しかし、設立時より本学会の根本に流れているのは、農学系の研究者を中心とした栄養学、食糧学の基礎研究です。日本医学会の第14番目の分科会として属しているのは、医学部では出来かねる栄養学、食糧学に関する基礎研究を柱として行っている学会だからこそと医系出身の現会長が思っている事をお忘れなく。今年も御支援宜しくお願いします。