新年にあたって

公益社団法人日本栄養・食糧学会会長
第22回国際栄養学会議組織委員長 加藤久典

公益社団法人日本栄養・食糧学会会長 宇都宮一典

明けましておめでとうございます。2020年5月の総会で会長を拝命しました。吉田博副会長はじめ新たな執行部での学会の運営に取り組んでおります。

本年の幕開けは、誰も経験したことがないものとなっています。本誌がお手元に届くころには、新型コロナウイルス感染症に関して喜ばしいニュースが世界を駆け巡っていることを期待しながら本稿を書いております。しかし現時点では国内では第3波と呼ばれる(後世にどのように位置づけられるかはわかりませんが)状態に突入し、感染者数は過去最大と報道される日が多くなっています。会員の皆さまのお仕事、学業、家庭生活等も激変しているのと同様に、このような中での学会運営は予想外の対応の連続となっています。

2021年9月14日から6日間の予定で準備をしてまいりました第22回国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN)を2022年12月6日(火)から12月11日(日)に延期する決定をしたことは、会員の皆さまには既にウェブ等でお知らせしたところです。この場を借りまして、そのような決断に至った経緯を述べさせていただきたいと思います。

22nd IUNS-ICNを日本で開催することは、2013年9月に行われた国際栄養学連合(IUNS)の総会での投票で決定しました。IUNS( International Union of Nutritional Science)は1946年に設立され、現在80余りの国や地域が加盟し、17の関連団体(アジア栄養学会連合(FANS)など)と連携を取って活動しています。IUNSは国際学術会議(ICS)のメンバーで、我が国は日本学術会議を通じてIUNSに加盟しています。世界の栄養学の中心ともいえるIUNSですが、その4年に一度の最重要イベントであるICNは、1975年以来の日本での開催となります。組織委員会は本学会と日本栄養改善学会とでお互いの強みを活かせる体制にし、メンバー一同しっかりと時間をかけて準備を進めて参りました。

昨年仙台での開催が予定されていた本学会の第74回大会は、現地開催を断念するに至り、講演要旨集の発行をもって発表を行っていただいたことになりました。多くの皆さまが経験されているように、昨年来多くの学会がオンラインでの開催となっています。本学会もオンライン(バーチャル)開催の実現のために積極的に情報収集や準備を行い、昨年9月には第74回大会のサイドイベントのような形で、一部の一般演題のポスター発表、特別講演、昨年度の本学会各賞受賞者の講演を全てオンラインで行いました。講演は何れも大変充実した内容であり、ポスター発表も活発な議論がなされて、高い水準での開催となったと考えています。これ以降も私自身も様々なオンラインでの学会、研究会、セミナーなどを企画・運営、あるいは参加して、バーチャル形式の学会大会の将来には十分な可能性があると確信するに至っております。さらなる技術の進歩、運営側の工夫、参加者の関与の仕方の進化など、今後ますます充実したオンライン学会の開催が期待できます。

しかし、22nd IUNS-ICNの開催は延期することとなりました。この決定に至るには、IUNS理事会との頻繁なウェブ会議を含む関係者内での徹底した議論がありました。学会がほぼオンライン開催のみになり、その形式に誰もが慣れてきた中で生まれたのは、対面での交流への「渇望」であるように感じています。研究者仲間のふれあい、偶然な出会いによる展開、講演・発表会場の雰囲気から伝わる学術への想い、等々は現在手に入れにくいものではないでしょうか。IUNS理事会にこの提案を伝えたところ、すぐに正式に承諾する旨のレターをいただきました。その中にAttending various online conferences has created a level of "virtual fatigue" which has made people less inclined to participate.という文があり(バーチャル疲れ)、同じ問題意識を共有していることがわかりました。

新型コロナウイルスへのワクチン開発の状況などによっては、1年3か月という大きな延期は必要なかったのではというご意見もあると思います。特に発表を楽しみにしていた学生さんが発表できなくなるといった状況も想定できます。しかし、演題登録締め切りの時点で、世界中の方々が安心して参加できるような状況になるためには、この時期設定はやむを得ないものと考えます。今のところ可能な限り全てのプログラムを対面で開催する方策を探っていきたいと考えています。

会場は同じく東京国際フォーラムです。組織委員会としては、引き続きこの状況に全力で対応していく所存ですので、会員の皆さまにはこれまで同様にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。