ICN2022東京閉幕後の新たな歩みとなる新年にあたって

公益社団法人日本栄養・食糧学会会長
代表理事・会長 吉田 博

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:吉田 博

会員の皆様、あけましておめでとうございます。わが国では2020年から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の波が幾度も高まるなか、昨年の第6波と7波の間という絶妙な時期に芦田均会頭(現在、代表理事・副会長)のもと第76回日本栄養・食糧学会大会が神戸で開催され、現地で多くの皆様が学会に参加いただいた賑やかさと充実度は久し振りの感覚でした。

その第76回大会のテーマは「ポストコロナの未来を拓く栄養科学・食糧科学研究のあり方」であり、私たちが現在抱えている重要な課題・テーマを活発に議論できたことを心より嬉しく思います。その際に行われた日本栄養・食糧学会75周年記念祝賀会では、日本医学会の門田守人会長をはじめ多数の御来賓から御祝辞を頂戴しました。門田会長は「医学における栄養学・食糧学の重要性」を示してくださり、あらためて本学会の果たすべき重要な役割を皆様とともに認識できたと思います。

また2022年12月6~11日には、第22回国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN)が東京で開催されました(組織委員会委員長:加藤久典前会長)。第8波のコロナ禍のなか、“The Power of Nutrition: For the Smiles of 10 Billion People “と魅力的なメッセージが掲げられ、栄養・食糧を巡る世界的な課題の解決に向けて、現在そして次世代に生きる人々の健康と幸福を基盤から支える栄養学・食糧学分野について多くの成績が発表されました。Withコロナを乗り越えPostコロナに向けて、確かな健康食と栄養学のナレッジが世界の人々に発信され、見事に共有されました。これもひとえに、ご参加いただいた皆様、学会の準備にご協力いただいた皆様のご高配の賜物であると心より感謝申し上げます。

近年、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧症、脂質異常症など生活習慣病が増加し、その対策が国家的な課題になるに至り、わが国では2018年12月に脳卒中・循環器病対策基本法が制定されました。「脳卒中と循環器病克服第一次 5ヵ年計画」の検証・振り返りが行われ、2021年からは第二次5ヵ年計画が進められています。また2020年には、健康寿命の延伸等を図るため「循環器病対策推進基本計画」が閣議決定され、医療体制の充実などとともに、予防・国民への啓発が大きな柱として掲げられているなど、生活習慣病等は今もなお国民の重要な健康課題ですが、これらの基本的な対応は食事・栄養などの生活療法であり、その基盤となる科学は言うまでもなく本学会の栄養・食糧学です。

また一方では健康寿命の延伸が人々の健康とともに健全な社会にとって鍵であり、そのなかでは高齢者のフレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドローム対策が重要となります。かかる意味から本学会の栄養・食糧学基金の研究助成テーマはまさしく、「生活習慣病、フレイルの予防と治療に関する栄養・食糧学的研究」および「健康寿命の延伸と新たな健康課題の解決に資する食品開発に関する研究」であります。このような栄養学・食糧学の研究成績が日本栄養・食糧学会誌のなかで発表されることを大いに期待しております。

健康日本21の次なるプランとして、「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」がビジョンであり、「誰一人取り残さない 健康づくりを展開する(Inclusion)」、「より実効性をもつ 取組を推進する (Implementation)」を基本的共通課題として活動が始まっています。日本栄養学学術連合は、2021年12月の「東京栄養サミット2021」において生活習慣病を引き起こす過栄養を改善する旨の提言を行い、「持続可能性のある健康な食事」に関する研究の推進、なかでも日本食の有効性に関するエビデンスに基づいた栄養改善を研究から実践につなげるように取り組んでいます。また東京栄養サミット2021では、栄養課題の解決に向けて持続可能な開発目標(SDGs)の推進に資する議論などが行われ、その成果として東京栄養宣言「グローバルな成長のための栄養に関する東京コンパクト」が発出されました。

「持続可能性ある健康を推進する食事」をはじめ栄養・食糧学の成果について、公益社団法人の日本医学会分科会として持続的に発信していくため、日本栄養・食糧学会は栄養学・食糧学を基盤として国民・世界の人々の健康推進に持続的に貢献していくよう努めてまいりますので、会員の皆様におかれましてはご意見をお寄せいただき、引き続きご協力いただけますと幸いに存じます。