持続可能性を備えた健康食を支える新たな歩みとなる新年にあたって

公益社団法人日本栄養・食糧学会会長
代表理事・会長 吉田 博

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:吉田 博

 このたび元日より発生しました令和6年能登半島地震で被災された皆様に、衷心よりお見舞い申し上げます。

 また、犠牲となられた方がたに謹んでお悔やみを申し上げます。被災地で余震も続き、救援活動が極めて困難な状況にあることと存じますが、皆様の安全と一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。

 わが国では2020年から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の波が幾度も繰り返し、昨年2023年は始まりから第8波のなかにあって夏には第9波の状況となり、インフルエンザの流行も加わりました。しかしながら人類は、これまでの歴史のなかで幾つもの困難を乗り越えて、経験・学び・知とともに努力を重ね現在に在ります。

こうしたコロナ禍のなか、久し振りに北海道・札幌にて園山慶会頭(北海道大学大学院農学研究院教授)のもと第77回日本栄養・食糧学会大会が開催され、現地で多くの皆様にご参加いただき活発で充実した大会となりました。その第77回大会のテーマは「New Frontiers in Science and Arts – 科学・理論と実践の新しい地平」であり、私たちが現在抱えている重要な課題を活発に議論し、次世代へ繋ぎ伝える確かな一歩を自覚できたことを心より嬉しく思います。

2022年12月6~11日に開催された第22回国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN東京)、そして昨年第77回大会のなかで行われた日本・韓国・台湾の国際シンポジウムなどでは、日本栄養・食糧学会の国際的活動の活性化が明確に展開されていました。その勢いのなかで第14回アジア栄養学会議(Asian Congress of Nutrition : ACN)が2023年9月14日~9月17日に中国の成都市で開催され、宮澤陽夫先生(東北大学教授)、矢ヶ崎一三先生(東京農工大学名誉教授)がFANSのLifetime Achievement Recognitionに、加藤久典先生(女子栄養大学教授)がFANSのFellowにそれぞれ選出されました。

ifetime Achievement Recognition やFellowは、今回初めてFANSに設けられたものであり、FANSのHardinsyah会長より賞状とメダルが授与されました。またFANSの役員改選が行われ、Yuexin Yang教授(China)が新しく会長に就任されました。また本学会代表理事・会長である私もFANSの理事に選任されました。栄養・食糧を巡る世界的な課題の解決に向けて、現在そして次世代に生きる人々の健康と幸福を基盤から支える栄養学・食糧学分野の発展のために、本学会が果たすべき役割は重要であり、国内外から期待が寄せられていると思います。

本学会の栄養・食糧学基金の研究助成テーマは、「生活習慣病、フレイルの予防と治療に関する栄養・食糧学的研究」および「健康寿命の延伸と新たな健康課題の解決に資する食品開発に関する研究」であります。このような栄養学・食糧学の研究成績が本学会誌のなかで発表されるとともに、世界的にそれらの成果・知識が共有されることを大いに期待しております。

「持続可能性ある健康を推進する食事」をはじめ栄養・食糧学の成果について、公益社団法人の日本医学会分科会として継続的に発信していくため、日本栄養・食糧学会は栄養学・食糧学を基盤として国民・世界の人々の健康推進に持続的に貢献していくよう努めてまいります。会員の皆様におかれましてはご意見をお寄せいただき、引き続きご協力いただけますと幸いに存じます。