栄養学・食糧科学のさらなる発展をめざして

公益社団法人 日本栄養·食糧学会
代表理事·会長(令和6·7年度):芦田 均

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:芦田 均

新年を迎えるにあたり、会員の皆様方に日本栄養・食糧学会代表理事・会長としてご挨拶を申し上げます。

本学会は、栄養学ならびに食糧科学の進歩をはかり、国民栄養の向上に寄与することを目的に、1947年に設立されて以来、77年を迎えました。私の会長としての役目は、次の100周年に向かって「栄養学・食糧科学のさらなる発展」のための基盤構築と考えており、これに基づいた活動を展開しております。詳しくは学会ホームページの会長あいさつをご覧いただけると幸いです。

上記の学会活動を展開するために、将来構想検討委員会の下にワーキンググループを設けてホームページに記載の5つの柱に関して活発に議論を行い、実際に活動を進めようとしています。本学会も、他の学会と同様に会員数の減少が続いており、会員数を減らさないようにするためのしくみを議論しています。このことにも関わりますが、若手会員の活躍の場を増やすため、本年の名古屋大会から本部主導の若手シンポジウムを始めるとともに、シンポジストを中心に学会誌へミニ・レビューを掲載して頂くことを検討しています。これらのことを含めて、新たに若手会員の委員会を設置し、実質的な活動を委員にお任せするつもりです。

2000年に採択された国連ミレニアム宣言には、子どもと女性の健康促進、男女平等推進、教育普及、生活環境の向上などを目指した目標が設定されています。女性会員数が男性会員数とほぼ同じであることは、本学会の特徴の一つですが、理事や各種委員会の委員などは女性の就任が少ない状況です。そこで、昨年「ダイバーシティ推進委員会」を新設して、(一社)男女共同参画学協会連絡会に参画しました。この連絡会で他の学会と情報を共有するとともに、女性会員の活躍の場を増やすようにします。将来的には女性会員に代表理事を担って頂ければと思っております。

学術面での活動を紹介します。まず、医学会との連携ですが、この度、日本医学会連合の加盟学会連携フォーラムが採択されましたので、本年の名古屋大会では日本疫学会と「栄養疫学の可能性と展開~ライフコースを通じた健康への貢献」というシンポジウムを開催します。

次に国際交流についてですが、昨年、5月福岡大会の際に韓国食品栄養科学会(KFN)との国際シンポジウムを開催し、10月には韓国・済州島でKFN、台湾栄養学会(NST)、ならびに本学会の3か国での国際シンポジウムが開催されました。いずれも若手の会員の方々にご講演頂きました。済州島でのシンポジウムの際に、3か国での連携国際シンポジウム継続開催が承認されました。名古屋大会でも3か国連携国際シンポジウムを開催します。

また、本年8月にパリで開催される第23回国際栄養学会議(23rd ICN)には、二つのシンポジウムを提案して採択されました。一つは若手のシンポジウムであり、若手のシンポジストに対して経費の援助を行います。ICNに限らず国際学会への参加援助もこれまでより増額するとともに枠を拡げることを進めています。さらに、本学会からJournal of NutritionとBritish Journal of Nutritionの編集委員を推薦して採択されました。

本学会では、他の学・協会に先駆けて宇宙食健康認定制度検討委員会を設けて、宇宙空間での健康·栄養などの研究開発に対応すべく、内閣府と相談して制度の具体化を進めています。今年中には会員の皆様に進捗報告ができるのではないかと思います。昨年は能登半島地震を受けて、緊急企画として災害栄養に関するシンポジウムを福岡大会で開催しましたが、夏には能登半島方面を含めて各地で大雨による災害がありました。近年、激甚災害が増えてきているため、災害栄養についても本学会で進めるべき課題であると認識しています。

宇宙食と災害食は似ているともいわれています。宇宙も災害の被災地も限られたライフラインの中でストレスフルな生活を余儀なくされる点から環境が似ており、いずれも常温保存性や強靭な包装容器が求められます。このようなことから、「災害食から宇宙食へ」、また逆に「宇宙食から災害食へ」と相互に発展できるのではないかと考えられております。本学会においても宇宙食や災害食の開発研究に貢献していきたいと考えています。

昨年の本学会の活動と本年の展望を記載いたしましたが、本学会は、人々の健康と幸福を支える基盤である栄養学と食糧科学の進歩・発展のために重要な役割を担っています。このことを肝に銘じて活動を発展させるべく運営を進めていく所存です。