会員のみなさまへ

公益社団法人 日本栄養・食糧学会 会長(令和2・3年度):加藤久典

公益社団法人 日本栄養・食糧学会:加藤久典

「この度令和2年度および3年度の会長を拝命いたしましたのでどうかよろしくお願い致します。」という内容のご挨拶を述べさせていただくつもりでした、しかし現在人類が対峙している新規感染症の嵐の中で、本学会の将来を考えるうえでもこのCOVID-19の状況について真っ先に考えざるを得ないことをお許しください。

会員の皆様の生活も仕事の様式や進め方も、今までとはすっかり変わってしまっていることでしょう。本学会も74年目に入った歴史のなかで初めて、大会に集うことを断念しました。2011年東日本大震災の際にも集会の中止が議論されましたが、会頭の近藤和雄先生が様々な工夫をこらして開催され、無事に乗り越えました。しかし、今年の第74回大会は、綿密な準備をされてこられた会頭の宮澤陽夫先生と東北支部の先生方そして宇都宮一典前会長により集会中止が決定されました。早い時期での的確なご英断には、感謝を申し上げるしかありません。(宇都宮前会長の下で2年間副会長を務めさせていただきましたが、宇都宮先生の会長としての手腕や配慮の細かさなど、尊敬することばかりでした。)

このウイルスそしてその感染症については、科学的な解明はいまだ緒についたばかりで、様々な情報が錯綜しています。個人も社会も混乱が続いています。こうした未曾有の状況においては、「臨機応変」あるいは「柔軟」ということが最も求められるのではないかと思います(「拙速」は避けなければなりませんが)。本稿に書いてあることもあっという間に古びた情報になり、過去の遺物となることは大いに考えられます。ウェブサイトの挨拶文ですので、期を見てバージョンアップしていきたいと思っています、(アーカイヴは残します)。

本学会の臨機応変な対応として、「新型コロナウイルス感染症への栄養面での対処~日本栄養・食糧学会からのお願い~」を社会に向けて発信したことが挙げられます。感染拡大の初期に正しい情報を提供できたこと、引用やリンクの依頼が続くなど多くの反響があったことから、学会としての社会への責務を果たせたものと考えています。さらに、準備に少し時間がかかりましたが、学会賞等の受賞講演、第74回大会の一般演題に申し込んだ方のうち希望者によるポスター発表を9月20日(日)にオンラインで行います。その前日には3月から延期された関東支部の支部シンポジウムがやはりオンラインで行われます。

現在多くの学会がオンライン開催(バーチャル開催)となっています。これを「やむを得ず」と考えるか、新しい学術交流の方式を進化させるチャンスと捉えるか、これは新型ウイルスによって社会が変化している他の状況と同様と思います。オンラインの授業や会議、テレワーク、テイクアウトなどは同様にメリットとデメリットを有していると言えます。オンラインの学会は盛り上がりを欠く場合が多いという意見もあります。これも運営側と参加者側の工夫や意識で克服される部分も多いと思います。実際に第74回大会の学生優秀発表賞の最終審査を今年はオンラインで行いましたが、選考委員の中からは「例年より密度の濃い審査ができた」という声もあがっていました。

近年のテクノロジーの変化やそれに伴う意識の変化は目まぐるしく、今回のウイルスの出現はそうした変化を大胆に加速する結果となっているように感じています。今の大学生は生まれた時からインターネットがある世代(Generation Z)ですが、私自身は彼ら彼女らの柔軟な頭脳に期待しています。感染症下の困難な状況も、緊張が増している国際情勢も、AI時代での人類の発展も、そして拡大が避けられない栄養・食糧学の課題も、しなやかに対応してくれるであろう若手に対して、学会として何をプレゼントできるか考えて行きたいと思っています。

長くなってしまったので、まずはこのあたりで終わらせていただきます。2022年12月に延期されました第22回国際栄養学会議(22nd ICN)に関して、組織委員長を拝命しているのに何も言及していませんが、これもCOVID-19との関係で様々な状況を想定して準備を進めています。今年の10月には演題登録が始まります(現在停止中です)。積極的なご参加をお願いします。さらに、オリンピック/パラリンピックと同様に来年に延期となった東京栄養サミットについてや、栄養・食糧学における世界の新しい動きについてなど、機会を改めて述べさせていただきたいと思います。

最後になりますが、本年3月17日に本学会前事務局長の高野靖氏が急逝されたことをご報告させていただきます。高野氏には、2015年の第12回アジア栄養学会議(ACN2015)の成功を支えていただき、ICNでも引き続き事務局員として取りまとめ役をしていただく予定でした。高野氏の多大なるご貢献についてはこちら(PDF)で紹介させていただいています。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

過去の会長のあいさつ